Column
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2015/03/31
かれ木に花を咲かせましょう
※このコラムは東京新聞(2015年3月31日(火)発行分)に掲載されたものです。
かれ木に花を咲かせましょう
八神純子
この歌を一緒に歌ってCDにした岩手県大槌小学校六年生の卒業式に参列させてもらった。76人の卒業生には、2011年の暮れ、弓道場でのキャンドルライブで、この歌を作るきっかけをくれた女の子3人組もいた。みんなは出会った頃よりずっと大きくなって、きりっと引き締まった顔にスーツやドレス、羽織・袴姿がよく似合っていた。
袴姿で卒業証書を読み上げ、子どもたちに授与する校長の菊池啓子先生の表情が、子どもごとに違うのに気が付いた。ある子には母のように微笑み、ある子にはちょっと厳しく。ある男の子が壇上に上がると、声を詰まらせ見つめたまましばらく涙ぐんで何も言えなかった。菊池先生と子どもたちの間でしか分からない絆があるのだと、とても感動した。
「旅立ちの言葉」が終わると、3人組の1人がピアノで卒業生たちの歌の伴奏を始めた。驚いた。津波で母親を亡くした彼女は、前日に一緒にご飯を食べた時には手料理でお兄さんを喜ばせていると嬉しそうに話していたのに、伴奏の話は全くしなかった。ピアノを弾く姿がどこか私に似ていると思えた。
卒業生の退場で流れたのは、みんなで収録したこの歌だった。歌詞の最後は「愛し合って夢つなぐ 命のかぎり」。絆に支えられ、子どもたちはきっと次々と花を咲かせてくれるはずだ。
さて、長期間、コラムを読んでいただき、ありがとうございました。次はライブ会場で会いましょう。