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    ※このコラムは中日新聞(2016年9月1日日(木))に掲載されたものです。

    「異国の地で学ぶ」

    カリフォルニア・サンノゼで行った東北復興チャリティーコンサートの募金で、高校三年生から大学院一年生までの学生を、最先端企業が集まり「イノベーションの聖地」と言われるシリコンバレーに招待した。航空券代もホテル代も一切不要。ただし東北復興への思いを書いたエッセーか動画の提出が条件。応募してきた四十五人から、オンライン面接で八人を選んだ。うち六人は東北からの参加。私は「保護者役」として成田空港で合流した。
    サンフランシスコの爽やかな風を感じながら、空港から直行したのはオラクルという世界第二位のデータベースの会社。もちろん日本人も働いている。学生たちは「この会社に入ったきっかけは?」「日本の会社と何が違う?」などと質問を浴びせた。
    夜にはアメリカで生まれ育った日本人と会った。医師を目指しているという彼は「ボランティア活動の経験から、自分の手で直接人を助けられる『医師』を選んだ」。時差ぼけ気味だった学生たちは「自分の手で」という言葉に強く反応した。
    皆が口をそろえて「カルチャーショックだった」と話したのは、グーグル本社。子供や愛犬を連れての出勤もできるし、ソファに足を投げ出してパソコンに向かってもいい。でも仕事は厳しい。一見優雅に見えても結果を出さないと、いつしか彼はそのソファから消えているらしい。
    アップルに勤める日本人もいつ解雇されるか分からないと言いながらも、シリコンバレーで働き続けたいという彼らの強い願いを感じた。
    私にも意義深い講義だったのは、スタンフォード大学の教授のお話。「優れたイノベーションはシンパシー(同情)からではなくエンパシー(共感)から生まれる」という言葉は、私の最近の歌や支援活動の背中を押してもらったようで、ちょっとうれしくなった。
    出会った人たちには共通点があった。シリコンバレーが好きなこと。結果が求められること。失敗を恐れず、自分の力で切り開こう、成し遂げようとしていること。当たり前に聞こえるが、実際にそうするのは難しいことばかりだ。
    同じ日本でありながら、異国の地で挑戦する姿に、学生たちはどんな刺激を受けたのだろう。最終日、学生たちはそれぞれが考えた課題を発表した。欲を言えば具体的な方法論、How?を自分の言葉で聞きたかった。ひとりひとり、個々と話し合いたかった。もっと時間が欲しかった。
    シリコンバレーツアーで得たものを、どう東北の復興に役立てるかは、学生たちのこれからにかかっている。一方で私にも「もう少し、アメリカ人と話す機会をつくるべきだった」と反省点が残った。次回はもっといいツアーにしたい。